Column
森有正という人がいました。
東大の哲学科を出て、30代にして東大の助教授になりながら、パリに留学の際にそのままパリにいついてしまった男です。
パリ大学の東洋語学校で日本語教師をしながらパスカルの研究をされた方です。
今手元に本がないので記憶で書きますが…。
パリに暮らした日本人です。
セーヌ川が見えるアパートに住んでいました。
彼は在仏なのでアパルトマンと書いています。アパートというと、庶民的な感じがしてアパルトマンというとしゃれた感じがします。
この表現のテクニック学ばないといけませんね。
朝、目が覚めてカーテンを開けると、セーヌ川を台船が遡っていくのが見える。
セーヌの流れは穏やかで流れていないように見えるけれども、水量が多く、見かけ以上に流れは強いので、台船は遅々として進まない。
それでも、自分がコーヒーを淹れたりして朝食の準備をしているうちに、台船は上流へ行ってしまう。
翌日も、朝、カーテンを開けると台船が見え、同じことが繰り返される。
ある日、自分は気づく、そのような一見同じような日常の営みのくり返しが、自分の物事への理解の質的変化につながることを…。
たしかそんな意味だったと思います。
ここでは、積み重ねが二重に出てきます。
台船のたゆまない遡上の努力の結果、遅くはあっても、目指す上流に遡っていくことができる。ということ。
それから、そのような、機械的な取り組みの繰り返しが、質的な変化をもたらすことです。
私たちの日々の教務は多様であって、変化に富んでいます。
士業に従事する者であっても、取り扱う業務の種類は日々違いますし、営業もあます。
ただ、その煩雑さに惑わされず、それぞれについてしっかりと経験なり、知識なりを積み重ねていくことの大切さを、この話は認識させてくれているように感じます。
そのようなことを肝に銘じて、日々の仕事に取り組んでまいりたいと思います。
ところで、これって「商いは飽きない。」に通ずることでしょうか。