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前回、遺言の方法について解説しました。
通常時の遺言としては、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」「秘密遺言」の3種類があることを説明しました。
今回は、その内の自筆証書遺言について解説します。
自筆遺言証書について、民法では第968条に、
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
ここで重要なことは、
① 遺言者が全文、日付および氏名を自書すること。
② これに印を押すことです。
まず、自筆であることについて、これは遺言書全部が本人の自筆であることが求められます。
例えば、パソコンで文章を作って氏名だけサインするのはアウトです。映像や、録音も不可です。年を取った親に手を添えて補助して書いた遺言も無効とされます。
氏名は、本名でなくともペンネームでも有効であるとされていますが、戸籍に記載された本名で書くことが後々に紛れがなくてよいと考えられます。
日付は日にちを特定できることが必要です。例えば「平成29年8月」と月までの表示のものは日にちを特定できません。また、「平成29年吉日」という表記も同様に日にちが特定できないとされています。
数字は、漢数字でもアラビア数字でも構いませんが、アラビア数字の方が読み書きに誤りが少ないと思われます。
次に印を押すことですが、これは認め印でも構わないこととされていますが、本人の意思であることを明確にするという意味で実印を使うことをお勧めします。
具体的な書き方については、いずれ項を改めて書いていくこととしますが、次に自筆証書遺言の長所と短所について説明します。
まず調書、自分一人で紙と筆記用具がと認め印があれば作成できますので、簡便で書きやすいという長所がありますが、そのことがまた短所にもつながっています。
短所としては、
①自分の死後きちんとだれかに見つけてもらう必要があり、しかもないがしろにされないことも重要で、そのための保管をどうするかという問題があります。
②本人の意思によって自筆で書かれたものであるがどうかということについて、後々疑義が生ずる恐れがあります。なにしろ本人にそのことを確認できないので すから、やっかいです。
③記載誤り、記載漏れの恐れがないとは言えません。とくに財産について漏れが生ずる恐れや、記載があいまいなため本人の意思が特定できないという懸念があります。
④本人の死後家庭裁判所で検認という手続きを行う必要があります。
検認とは「検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続で」相続人の立ち合いが必要とされています。
このように、短所の多い方法ではありますが、専門家の助言を得てきちんと作成の上、いずれかのタイミングでよりしっかりとした遺言とするための過程のものとしては、いいものであると私は考えます。
なお、民法の第二項自筆遺言の修正については、記載のとおりです。
まもなく旧歴のお盆ですね、親族が集まる機会でもあります。
協議が整っていない相続や、今後のことをいろいろ考えるいい機会でもあります。
相談事などありましたらどうぞご遠慮なくお声がけください。
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