Column
私の赤ん坊 北杜夫
北杜夫は60代の私が高校時代にはよく読まれた作家だと思います。
軽妙というか、ユーモアあふれるドクトルまんぼう物と、楡家の人々のような本格的な小説に加え、信州で過ごした旧制高校時代について書かれたものには、トーマス マンやヘルマン ヘッセなどが愛読書となった1970年代にしてはやや古風な高校生であった私には、一種憧れのように感じられました。
この作品は、ドクトルまんぼう路線のユーモアあふれるエッセイになっている。
冒頭から「いつぞや私は、赤ん坊なんてまあムシケラみたいなものだ、などと書いたため、神さまは私をこらしめようと、たちまち一人の赤ちゃんを恵んでくださった。といってそこらに落ちていたのではなく、ちゃんと私の妻がうんだのである。」といかにも彼らしい書きぶり。
全体に、ふわふした足が地につかないような感じの文章が、男が子供を授かった時のうれしいけれど、落ち着かない、どこか実感がわかない気持ちをうまく表しているように思います。
タグ: 自分史 北杜夫 行政書士 行政書士こいでたくや事務所