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今回は法務局での自筆証書遺言の保管制度です。
これは新しく作られた制度で、新しく「法務局における遺言書の保管等に関する法律」というものがつくられています。
どういう制度なのか、ざっと内容をご紹介すると、
① 遺言の保管の手続き
遺言の保管は、法務大臣が指定した法務局で行います。(これを「遺言書保管所」といいます。)その事務は、法務事務官の内指定された者が行います。(この者を、「遺言書保管官」と言います。)
遺言をの保管の申請は遺言者本人が遺言保管所に自ら出頭して行う必要があります。
どの遺言保管所に行くのかというと、「遺言者の住所地を管轄する遺言保管所」、「遺言者の本籍地を管轄する遺言保管所」および「遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言保管所」のいずれかとなっています。
遺言者は、これらのいずれかの遺言保管所に出頭した上で、申請人が本人であるかどうかの確認を受けた上で遺言書を保管します。
なお、保管される遺言書は封のされていない、法務省令で定められた様式で作成された者に限られます。
② 遺言書及びその情報の管理と閲覧
申請された、遺言書は遺言書保管所にて原本を保管するとともに、その画像情報等の情報を管理することとされています。
遺言者は、保管されている遺言書の閲覧を請求することができます。
なお、遺言者の存命中は遺言者以外の者は、遺言書の閲覧を請求することができません。
③ 遺言書の保管の申請の撤回
遺言者は遺言書の保管の申請を撤回することができます。
④ 遺言者が亡くなった場合の手続き
特定の既に死亡している者について、請求者が相続人あるいは受遺者となっている遺言書が、遺言書保管所に保管されているかどうかを証明した書面の交付を求めることができます。
遺言者が死亡した場合、相続人や受遺者等は遺言書の画像情報等を用いた証明書の交付請求及び遺言書原本の閲覧請求をすることができます。
前記の証明書の交付や閲覧があったときは当該遺言書を保管している旨を遺言者の相続人、受遺者および遺言執行者に通知します。
この保管制度と公正証書遺言を比較すると、いずれも検認が不要という点では同じです。
公正証書遺言で必要な承認が自筆遺言証書の保管制度では不要であるのに対して、公正証書遺言に存在する、出張制度や自筆できない者に対する口授・署名の代書の制度が自筆遺言の保管制度にない、という点は一長一短であると考えられます。
自筆遺言の保管制度の普及にあたって最大の課題は、この制度には遺言の内容について実質的に確認するルールがないことであると思われます。
個人が自分で考えた内容に矛盾があったり、事実に即していない場合であっても、そこを客観的に是正するすべがないのです。