Column
私は、仕事のご依頼をいただくと可能な限り現場に足を運ぶことにしています。
遠隔地の場合はそうはいきませんが、足を運ぶことでわかってくることがあると思うのです。
今の若い方の中には書類上の手続きに徹しているかたもいらっしゃるようですが、私にはちょっと心配な気がしています。
私が若いころ、土地の取引にかかわる仕事をしていたことがあります。
北海道での大規模な開発案件でのことです。
開発地の中に、農業用水路が一本ありました。
〇〇幹線という名前のいかにも重要そうな水路です。
沿革などを調べてみると、計画地を含むかなり広い範囲の灌漑に使われる、さの地域の水利の生命線のように書かれています。
これは大規模な付け替えが必要になり、プロジェクト全体の工事費にも影響を与えかねないリスクがあるものとして、当初から大変心配していたものです。
現地からの写真を見ても、かなり立派な水路のように見え、一層懸念が高まったのです。
ところが現地に行ってわかったのですが、堤は全体に立派な状態で残っているものの、水路として健全な状態が保たれているのは、頭首工からわずかな距離の部分で、他の部分は砂がたまり、枯れた植物が堆積して、利用されていない状態であることがわかりました。
地域の人口減少ら起因する作付面積の減少と、新しい水路がべつに小さいながらも作られたことで、利用が激減していたのです。
これなどは現地に行ってみて初めてわかったことでした。
公図なども、現在の図面より古い字図の方が、実態をよく反映している場合があることを、先日ベテランの不動産屋さんが言っておられました。国土調査で測量した図面の方が正確なはずなのに、手書きかとも思われるような図面の方が、土地の形状の特徴をよく反映していたり、昔の里道や用水の存在を反映していたり、ということが、あってそれが現在の土地問題を理解する手掛かりになったりするようです。
相続等の業務においても単なる書類作成だけではなく、実態を把握し、状況を理解することで得られたことで、依頼人に助言できる場合があろうかと思います。
また、書類をいただくだけの場合でも、現場の窓口の方とお話ししていると、コンピューターのデータベースに載っていないことについてのちょっとした情報が得られることもあるようです。
なにもかもコンピューター化され便利な時代になっても、私は足でかせぐことを続けていこうと思います。