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お客様の課題を一緒に考え解決する行政書士 こいでたくや事務所

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Column

景観法と景観条例 日本の景観はどのように守られているのか あるいはいないのか
2019年10月13日 メモランダム  その他法令Q&A 

最近、各地で街の再開発が進んでいますね。

東京オリンピックを来年に控えて、東京では、競技場などの整備はもとより、地下鉄やJRの整備が進んでいます。

渋谷駅などここ数年いや10年くらいいつもどこかで工事が行われています。

複数の鉄道が乗り入れていて、もと複雑な構造の駅が、工事による通行規制で一層複雑になって、方向音痴の私は、渋谷駅に行くたびに迷子になってしまいます。

東京の郊外でも、古いマンションや公団住宅等の建て替え等が進められているようです。

他方、住宅街を歩いていると空き家が目立ちます。私の感覚でいうと、10軒に1軒、あるいはそれ以上の割合で空き家があるように感じられます。

 

高度成長時代に比較的短期間に整備された都市のインフラ設備は、それから半世紀近くが経過し、再構築というか再整備は待ったなしの状況であり、また、人口の増加に加えて、人口の都市への集中が進んだのも高度成長期でその時期に整備された集合住宅も建て替えの時期に来ているのであって、かならずしもオリンピックだからということには当たらないのかな、と感じます。

もちろん、オリンピックを機会に一気にやってしまえ、ということもあるかとは思います。

また、空き家問題は人口減少時代に避けて通れない課題ですね。

これらの課題が表面化している「今」という時代は、都市問題については、大変重要な時代であるといえるように思います。

 

ここまで書くと、それぞれ裏付けるデータが必要になりますが、そこが本題ではないので今回は省略。

 

何が書きたいのかというと、このように一見それぞれの事業者がばらばらにやっているこれらの再開発事業の景観上のコントロールは法制度上どんな具合になっているのか、ということです。

機能しているかどうかはさておいて、どのような仕組みになっているのかについて、調べてみました。

 

まず、景観法というのがあります。

平成166月に公布され、平成16年の12月から翌年の6月にかけて施行された法律です。

制定の趣旨を読むと、

① これまでに500弱の自治体が景観条例を制定し、自治体レベルで景観の整備保全の取り組みが行われている。しかしながら、自治体レベル取り組みには、国民共通の理念の欠如や条例によるソフトな規制であるとか、財源であるとかの限界がある。

② ついては、景観を正面から捉えた基本的な法制を整備し、

・ 景観を整備・保全するための基本理念の明確化

・ 国民・事業者・行政の責務の明確化

・ 景観形成のための行為規制を行う仕組みの創設

・ 景観形成のための支援措置の創設 等を行う。

ということが書かれています。

 

それぞれについて、具体的にどのように示されているか以下に記載いたします。

まず、基本理念から。

非常に言葉の数の多い基本理念が書かれています。

そこでキーワードだけ示すと、

良好な景観は、

「美しく風格のある国土の形成と潤いのある豊かな生活環境の創造に不可欠」

「国民の資産として国民がその恵沢を享受できる。」

「地域の自然、歴史、文化等と人々の生活、経済活動等との調和により形成される」

「適正な制限の下に、調和した利用がなされる」

「地域の個性及び特色の伸長に資するよう、その多様な形成が図られる」

「観光その他の地域間の交流の促進に大きな役割を担うものである」

「現にある良好な景観を保全する」

「新たに良好な景観を創出する」

ものである。とされています。

景観は、自然環境と人間活動の総和である以上さまざまな要素が含まれる、ということですね。

 

次に、国民・事業者・行政の責務です。

これもまた言葉が多いです。

思い切って要約すると、

国民:基本理念に則り、良好な景観の形成に役割を果たすとともに、国・自治体の取組みに協力する。

事業者:基本理念に則り、事業活動に関し、良好な景観の形成に努めるとともに、国・自治体の取組みに協力する。

自治体:基本理念に則り、良好な景観の促進に関し、の区域の自然的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する。

: 基本理念にのっとり、良好な景観の形成に関する施策を総合的に策定し、及び実施する。

 

さて、次は行為規制を行う仕組みですが、これについては以下が示されています。

① やる気のある市町村がその責務を担う。(都道府県との協議同意により景観行政団体となった市町村が中心的役割を担う。)

② 広域的な景観形成については、関係する景観行政団体が協議して行う。

③ 景観法の諸制度や都市計画等を一体的に検討して、総合的な施策の推進を図る。

  関連する施策としては以下が示されています。

  「都市計画」「建築基準」「屋外広告物」「緑地関係」「公共施設」「文化財保護」

 

 

以上が言わば総論にあたる部分です。

景観行政団体は、上記を踏まえてまずは、景観計画を作成し、それを実現するための要件を地域ごとに整理の上、個々の開発について届出を受け、必要によって勧告や変更命令によって、計画の推進を図ることになります。

次回、具体的なことについて書かせていただきます。

タグ: 景観法  景観条例  都市  再開発  都市計画